私は

私は見、
私は聞き、
私は触れ、
私は嗅ぎ、
私は味わい、
私は思う。

 

像がそこに見える。例えばディスプレイとそこに映る文字が。
音がそこに聞こえる。例えばBarry Harrisのピアノ。
感触が感ぜられる。例えばキーボードのプラスチック素材の表面の平らさ。
匂いがそこにある。例えば番茶の香り。
味もここにある。例えば番茶の甘い味。
思いがここにある。例えば何を書こうかと思う思いが。思いには、含まれる。過去の像、未来の計画。遠く離れた場所にいる母の顔。父の言っていた言葉。自己像、自己規定。他者の発した情動の残響。いまここに「ない」ものが思いにおいて「ある」。


私は、色でない。
私は音でない。
私は固さ(触れた感覚)でない。
私は匂いではない。
私は味でない。
私は思いでない。自己像は、自己についての表象として浮かぶそれは、わたしではない。


私はそれらを観る。しかし、
私はそれらでない。
私はそれらのなかにない。
私はどこにもいない。
私はどこにもいない、しかし、
私はそれらと出会うあらゆる場に臨む。