一番幸福な人

 「一番幸福な人は? 他人の手がらを感ずることができて、

他人の楽しみを自分の楽しみのように喜べる人。」

ゲーテ詩集』高橋健二訳、新潮文庫、p.191

 

これには、さまざまなヴァリエーションが想定できる。

たとえば、

 

①嫌なやつは? 他人の失敗を感ずることができて、
他人の不幸を蜜の味として喜べる人。

②優しい人とは? 他人の失敗を感ずることができて、
他人の不幸を自分の悲しみのように悲しめる人。

③嫉妬深い人とは? 他人の手がらを感じるにおよんで、
その幸福を憎しみをこめて眺める人。

 

などなど。

②の人は、ゲーテの言っている人と正反対で、最も不幸な人かもしれない。世には苦しんでいる人がたくさんいる。無関心と言う態度を習得せずに、自身の精神的健康を保つことは難しい。優しいという世間的な肯定的評価とその人の幸福は一致しない。

 

ところで、
④自分の不幸をあたかも他人の不幸であるかのように喜び、享受できる人。

は幸せである。すくなくともゲーテの言った人よりも。じぶんじしんに対して、①の「嫌な奴」になるということである。

何者も彼をして本当の不幸に陥れることはできない。ヨブがもしそうであったなら、神でさえ彼を不幸にすることは出来なかった。世の人は彼を狂人と呼ぶかもしれないが、そんな誹謗中傷すら彼には蜜の味なのである。

 

ゲーテ詩集 (新潮文庫)

ゲーテ詩集 (新潮文庫)